うなぎの味は何で決まる?天然と養殖、国産と外国産の違いとは
あなたのうなぎに対する認識、間違っていませんか?
うなぎは一般家庭において、高級食材に位置づけられるでしょう。食卓に並ぶ機会もそう多くはないので、少しでも美味しくいただきたいものですよね。
そのためには調理の仕方も重要ですが、まずは「うなぎ選び」で失敗しないことが大切です。
うなぎ選びの検討材料としてよく挙げられるものには、天然か養殖かといった「飼育方法」、国産か外国産かといった「産地」があります。一方で、これらの違いがうなぎの味にどう関わってくるのかということについて、認識が曖昧な方も少なくないはずです。
そこで今回は、天然うなぎと養殖うなぎの違い、国産うなぎと外国産うなぎの違いを、生育環境、値段、味の観点から解説し、うなぎと環境の関わりについて見ていきます。
天然うなぎと養殖うなぎの違い
流通しているうなぎの99%は養殖といわれています。つまり、私たちのほとんどが口にしているうなぎは、養殖うなぎだといえるでしょう。
では実際のところ、天然うなぎと養殖うなぎにはどのような違いがあるのでしょうか。
生育環境、値段、味の面から、それぞれの特徴や、割合が大幅に違う理由について探っていきます。
生育環境
天然のうなぎは、海で生まれ、川や湖といった淡水で成長し、産卵期には再び海へ戻る、というサイクルで生きています。このような生涯を送る魚は「降河回遊魚(こうがかいゆうぎょ)」と呼ばれます。
天然うなぎは、乱獲や河川の開発、気候変動によって減少が続いており、日本でよく食べられている「ニホンウナギ」も、2014年に絶滅危惧種の指定を受けています。
養殖のうなぎは多くの場合、水質や水温が厳重に管理された屋内で育てられます。病気になった場合にも迅速に処置され、キズをつけないよう、ストレスを与えないように、工夫が施されている場合が多いでしょう。
それぞれの養殖場で特別に配合されたエサを与えられ、シラスウナギ(うなぎの稚魚)から成魚になるまでに半年から1年半ほどかかるとされています。
また養殖のうなぎといっても、「天然のシラスウナギを漁獲して育てる」という形式をとっているので、天然のシラスウナギは減少し続けている状況です。このままではうなぎが食べられなくなる可能性もあることから、卵から稚魚を育て、養殖した成魚から再び卵をとって育てるという「完全養殖」の実用化が急がれています。
値段
値段は、天然うなぎが養殖うなぎの3倍程度になることが多いでしょう。天然うなぎの値段には、やはりその希少性が影響していると見られます。
味
天然うなぎは、余分な油が少なくさっぱりとしているのが特徴です。自然界のなかで身についた、生き生きとした力強い味わいも期待できるでしょう。ただし、あくまでこれは成功例の場合です。
自然に生きる天然うなぎは、生息環境や時期にそのまま影響されるため、個体によって味に大きな差がでます。最悪の場合、川魚の独特な臭みが残ってしまっている可能性もあります。
養殖うなぎは、ジューシーで脂がのっているのが特徴です。安定した環境で育てられているため味にブレがなく、時期にも左右されません。クセがなく、食べやすい個体が多いでしょう。
国産うなぎと外国産うなぎの違い
日本において外国産うなぎといえば、中国産が代表的です。
国産か外国産かは、うなぎの購入に際して迫られる選択の最たるものです。値段の違いは目につくものの、それだけで判断しても良いのか、実際に値段に見合う違いがあるのか、という点で迷う方も多いでしょう。
国産うなぎと外国産うなぎの違いを、生育環境、値段、味の観点から明らかにしていきます。
生育環境
うなぎは「稚魚から成魚まで育てられた場所」によって、国産か外国産かが決まります。つまり、卵が産み落とされた場所が外国であっても、日本で育てられた場合は国産になるということです。
安心感という面に関していえば、身近に感じることからも、国産が上回ってしまうのは仕方ないでしょう。一方で、外国産を過剰に恐れる必要はありません。
外国産うなぎに対して良くないイメージを持っている方のなかには、2005年に起きた、中国産の養殖うなぎから「マカライトグリーン」という物質が検出された出来事がきっかけだという方も多いでしょう。ただしそれ以降、日本側も中国側も基準を強化し、より厳しい目で点検されるようになったという事実があります。
そのことも踏まえたうえで、国産と外国産を正しいものさしで比較することが大切です。
値段
値段は、国産のものが外国産の2倍程度だといえます。
外国産のうなぎは、食感がやや大味ではあるものの、厚みがあり脂がよくのっているのが特徴です。
国産のうなぎは、身がしまっていて味が濃く、外国産に比べてあっさり食べられるのが特徴です。
「うなぎ」といえば「浜名湖」の理由は?
日本を代表するうなぎ産地としてよく挙げられるのが、「浜名湖」です。一方、そのいわれは知っていても、理由について詳しく知らないという方もいるかもしれません。
ではなぜ、浜名湖はうなぎの産地を代表する場所とされているのでしょうか。
その理由として最も大きいのは、浜名湖が「うなぎ養殖の発祥の地である」ということでしょう。
浜名湖は名前に「湖」とついているものの、海水と淡水が入り混じった「汽水湖」として知られています。シラスウナギは、生まれて一定期間を海水域で過ごしてから淡水域に移動するため、その両方がそろっている浜名湖は、シラスウナギにとって格好の住処だったと予想できます。
また浜名湖には、流路延長が213km(日本全国9位)を誇る「天竜川」から、大量の地下水が流れ込んでいます。綺麗な水質の地下水が安定して供給されていることも、うなぎの養殖しやすさにつながったと考えられます。
環境に左右されやすいうなぎの養殖において、もとより適した環境がそろっているのが浜名湖だったのです。
養殖地として100年以上の歴史がある浜名湖は、いまでも全国有数のうなぎ養殖における拠点になっています。
うなぎの味を決めるのは「環境」
うなぎは安い食材ではありません。そのため、購入する際もいっそう慎重になりがちです。
産地や飼育方法、値段と、選ぶ基準になりうるものは数多くあるものの、知識がなければ判断基準を絞るのも簡単ではありません。
天然、養殖、国産、外国産、それぞれの環境がうなぎの味にもたらす違いを知っておくことで、特徴をふまえつつ、そのときの気分や好みに合ったうなぎを選ぶことができます。
国産のなかで、産地をさらに絞って選ぶのも良いでしょう。浜名湖のようにうなぎを名産としている土地のものを選べば、これまでの信頼と実績から後悔する可能性も低いはずです。
1877年より、浜松の地で100年以上の歴史を刻んできたうなぎ専門店「中川屋」でも、浜名湖で仕入れたうなぎを扱っています。身がしまっていて臭みのないうなぎを、「蒸し」の工程を挟む関東風で丁寧に焼き上げます。奥行きのある甘みが染み込んだ、照りの美しい身が特徴です。
また、通販でもそのままの味を再現。店舗に来られない方でも、こちらから「老舗の味」を気軽に堪能できます。自分へのご褒美にはもちろん、贈答用にも適しています。
育った環境に思いを馳せながらうなぎをいただくのも、乙な楽しみ方かもしれません。